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「Fastly」――CDNの世界にディスラプトを!ニフティクラウドとの提携で加速する世界市場への挑戦。

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Posted by 河原 あず  - 2016.8.17 09:08 -

かゆいとこに手が届くCDNを--現場目線で生まれた次世代CDN「Fastly」

2016年8月16日、CDN(Contents Delivery Network)を提供するサンフランシスコのスタートアップ「Fastly」が、ニフティ株式会社が提供するクラウドサービス「ニフティクラウド」との提携を発表した。CDNとは、ウェブコンテンツを配信するのに最適化されたネットワークのこと。CDNサービスのサーバーが、クライアントの環境の代わりにコンテンツを配信することで、配信の負荷が分散され、Webサイトの表示速度の向上につながり、メディアなどを中心に多くの企業が導入している。Akamaiという会社のシェアが世界で60%を占めているが、多数の競合がこの数年のうちに出現しており、その中でも最も勢いのある会社のひとつが「Fastly」だ。

「CEOのArtur BergmanがWikiaという会社にいたときに、AkamaiなどのCDNのユーザーだったのですが、彼の表現を借りると既存のCDNは”かゆいところに手が届かない”という問題があったのです。たとえば、キャッシュされたものを消すのに何十分という時間がかかります。コンテンツを配信している会社からすると、それは「消せない」のと一緒なのですよね。更に、設定を変えたときに、競合他社だとネットワークが分散されているので、設定の反映までに数時間かかります。そうすると、例えば1文字間違えて設定をしてしまうだけでも、やりなおしにとても時間がかかるところが不便なのです。それを解決するCDNを作ろうとはじめたのがFastlyです」

そう語るのは、FastlyでSenior Sales ExecutiveをつとめるMio Matsuda氏だ。実際、Fastlyは、キャッシュの消去や、設定の反映が即時可能なのが大きな特徴で、競合CDNと比較して、利用者の利便性を高めることに注力されている。

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「2011年にFastlyは誕生しました。最初は、小さめのファイルをたくさん吐き出すメディアサービスなどを追いかけて販売していきました。その後、徐々にエンタープライズのお客さんも増えてきましたね。Fastlyのトップページでは、秒間のリクエスト数がみられるのですが、200万くらいのリクエストを毎秒さばいていますね。とても成長しています」(Mio Matsuda氏)

CDNのマーケットサイズは全世界で32億ドルととても大きい。メディア系の企業。ニューヨークの出版社やBBC、CNNなどの大手メディア、新聞社、ニュース系のサイトに導入されている他、Twitter、NewRelic、Vimeo、GitHub、BuzzFeedなどの大手スタートアップも顧客リストに名を連ねている。

現時点でFastlyは、グローバルでは、業界第4位のシェアを持っている。日本の市場をみると、世界60%シェアを誇るAkamaiのほぼ寡占状態にある。Fastlyは日本法人を2015年に設立し、販売会社としてソフトバンクと契約してビジネスを開始した。

「北米が、今、最大のマーケットで、我々の売上げのおおよそ8割を占めます。15%をヨーロッパが占め、残りがその他のマーケットです。日本市場については、今後の成長を考えてももちろん重要だと捉えています」(Mio Matsuda氏)

「ただし、多くのパートナーを作るつもりはないのです。私たちは、戦略的に考えて、日本のお客様に弊社のサービスを届けやすくしたい。そのために、さまざまな領域で特徴のあるパートナーさんを作っていきたいのです。ニフティさんであれば、ニフティクラウドを持っていて、ゲーム系のお客様にとても強い。ソフトバンクさんは日本全国の販売網がある。それぞれのパートナーさんについて、なるべくかぶらないように、特徴が生きる形で選別させていただいて、パートナーシップを組むという形でやらせて頂いています」(Mio Matsuda氏)

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ニフティクラウドとFastlyの連携イメージ(ニフティ株式会社プレスリリースより

ニフティとの提携は「Fastly」グローバル進出の重要な一歩となる。

Mio氏の勤める東京のオフィスはアジア太平洋地域を管轄する。日本も成長を始めているし、シンガポール、オーストラリアも大きなマーケットであり、それぞれの地域に手を伸ばしていくことになる。また、エリアの拡大だけではなく、新しいビジネス領域への活用も視野にいれているという。例えば、IoT(Internet of Things)も注目している領域だ。

「弊社の強みとして、リアルタイムログストリームというのがあります。デバイスからのログを数秒おきにストリーミングできるので、IoTとの相性はいいと思います。うまく使うと、ログ収集用のプラットフォームとしてFastlyを使うということも考えられる。集めたログをデータベースとして、解析するとかそういう事例も多くなってくると思いますよ」(Mio Matsuda氏)

ニフティでFastlyとの提携を担当した上野聡志氏によると、Fastlyとの提携の意図は主に2つあるという。

「1つは、ニフティクラウドが得意とするゲームなどを含むエンターテインメント系のクライアントを中心とした顧客へ高い付加価値サービスとしての提供ができることです。またFastlyのキャッシュ更新の速さや動的コンテンツをキャッシュとして取り扱いできるため、様々なWEB系のサービスやECサイトでCDNが気軽に利用できるようになります」

もうひとつが、同社が力を入れているIoT領域との相性の良さだ。

「ニフティは2月にシリコンバレーのIoTプラットフォーム”MODE, Inc.”とのパートナーシップを発表しており、シリコンバレーの最新のテクノロジーやソリューションを活用した、IoTプラットフォームづくりに積極的に取り組んでいます。リアルタイムなデータをどのように収集するかは一つの鍵になると考えています」(上野氏)

Mio氏に、日本の人たちにメッセージはありますか?とたずねると、次のように答えてくれた。

「Fastlyは、かゆいのだけど手が届かなかったとこに届いてくれるサービスなので、使い倒すのが今までのCDNに比べても楽です。次世代のインフラストラクチャとも相性がいい。アカウントは無料で作れますし、一定量いかなければチャージもされないので、開発者の方が気軽に試すこともできます。日本にオフィスもあるし、無料のアカウントでもサポートが受けられるので、試してみると良さもわかると思います。ぜひお試し下さい」

親和性の高い日本企業とのパートナーシップを築くことで、自社のプラットフォームをどんどん拡大していくFastly。引き続き、「かゆいところに手が届かない」既存サービスに取って代わり、クライアントにとって役に立つ、利用者目線のサービスの提供を追求していくという。インタビューの最後に、Mio氏は力強くコメントを述べた。

「我々は、次世代のCDNであり、新しいクラウドサービスです。Fastlyを多くのお客様に提供していくことで、既存のCDN業界をdisruptしていきたいです」

日本市場は足がかりのひとつであり、目指すのは、あくまでグローバルの市場だ。サンフランシスコで飛躍している気鋭のスタートアップと、日本企業との提携がこの1年で加速傾向にある中、Fastlyもそれを象徴する事例になりうるかもしれない。

 

※(注)TechWatchはニフティ株式会社によって運営されています。また、記者(編集長)はニフティ株式会社に所属しています。